家族信託の契約遺言書は無効に?

 数年前に公正証書で遺言書の作成をしました。この度、家族信託について知る機会があり、認知症への備えとして家族信託を検討しようと思っています。家族信託を契約すると、作成済みの遺言書は無効になりますか。(70代、男性)

契約が優先 信託財産以外は有効

 認知症による生前の財産凍結を防ぐための対策として注目されている「家族信託」には、委託者の死後の財産の継承先を指定しておくという遺言書の役割もあります。

 もし仮に、家族信託と遺言書の両方を準備した場合、家族信託の内容が優先されます。つまり、同じ財産について、遺言書で指定した継承先と家族信託で指定した継承先が異なる場合、遺言書の作成時期と家族信託契約時期の前後に関わらず、家族信託の内容が有効となります。

 一方、家族信託では委託者名義の全財産のうち、不動産や金融資産など一部の財産を信託することもできます。信託していない財産については遺言書による指定か相続発生後の遺産分割協議で継承先を決めます。

 あなたの場合、既に作成した遺言書の内容のうち、家族信託の信託財産についての内容は無効となりますが、信託財産以外の財産についての内容はそのまま有効です。

 家族信託の利点は、委託者の生前に受託者へ財産の管理を託すことができ、その財産からの利益は指定した受益者が得られることです。契約時は受益者を委託者自身とすることが一般的ですが、あらかじめ受益者の継承を指定しておくこともできます。継続的に家賃収入が得られる収益不動産、将来の介護費用や医療費などまとまった費用として備えておく現金、状況に応じて売却してほしい自宅や有価証券などを信託財産として検討します。

 家族信託や遺言書の準備は認知症になってからでは遅く、お元気なうちに備えることが欠かせません。相続のご相談を承っています。
<たのシニア生活彩り俱楽部アドバイザー(ファイナンシャルプランナー)平田純子>